| このインタヴューは、我が『早稲田大学・人物研究会が、1983年に行ったものである。なぜ、今ごろになって、このような<10年以上も前>の会見録を公開するに至ったか、について、若干の説明を加えたいと思う。
読んで頂ければ分かると思うが、会見当時、YMOのメンバーとして、坂本龍一、高橋幸宏、両氏と共に世界の音楽業界のトップに君臨していた細野氏が語ったその内容は、15年の年月を感じさせないメッセージを持っている。
その内容たるや、日米英の音楽状況から、アイドル、倫理問題から環境問題、西洋主義批判、テクノロジー、etc・・・と、幅も奥も限りなく深い。また、当時の氏が語った内容は現在の私たちの社会−世界を囲む状況に対する、ストイックなアンチテーゼとして投げかけられるものが多いのではなかろうか。
確かに、15年という年月は長い。しかし、細野氏の言説に古さはない。その一端でも、学外者、会外者に理解して頂ければと思い、公表に踏み切った次第である。
感想、異論、反論など、多くの反応が来ることを期待したい。
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・・・・・都内某所、某喫茶店・・・・・
YMO(当時)メンバー、ミュージシャンの細野晴臣氏登場。
[細野晴臣] コーヒーとケーキを。
[参加者一同] 本日は、お忙しい中、宜しくお願い致します。
* * * * * * * *
[桜井] 細野さんは、あまりテレビにお出になりませんけど・・・。カメラに写るのが嫌いなんですか?
[細野] 嫌いです。テレビもその一種だけど・・・。YMOとしてはそんなこと言ってられないワケ。個人的なエゴだから・・・。
[桜井] 細野さんが(YMOの)リーダーなんですか?
[細野] もう、リーダーもくそも無いです。こうなったら。(笑)
[桜井] 小学生とか中学生とかの方が、今はYMOのファンが多いでしょう? どうですか。
[細野] そうですか? 知らないんですよね。よくファンレターが来るのはね、十八歳くらいの高校生だね。女の子が多い。で、男の子は小学生だね。野球帽かぶったような子がね、街歩いてると、後を付いて来る。(笑)
[桜井] 細野さんは、年齢がそういう対象の年齢じゃないから、不思議な気しませんか?
[細野] そりゃー、不思議だよねー。向こうも不思議だと思ってるんじゃないかなぁ。片や「シブがき隊」とか、「たのきん」とか好きなんでしょ? 子供たちは。片やYMOも好きなんだから、きっと混乱してるんじゃないかな、自分で。
[泉川] 同じ歌手として、ああいうアイドル歌手なんかと一緒にされては困るとか 、そういう意識はありませんか?
[細野] そういうのはねぇ・・・。放っておいた方がいいんですよ。
[桜井] (アイドル歌手の)プロデュースなんかは興味ありますか?
[細野] プロデュース自体には興味が無くて、仕事が来たら、こっちのペースで巻き込もうという、そういう事だから。
[大野] じゃぁ、細野さんの少年時代は、どういう音楽を聞いていたんですか?
[細野」 僕の少年時代ってのはね、アメリカのヒット・パレードばっかり聞いていたの。だから、歌謡曲ってのは、一番遠かったな。
みんな、テクノ・カットにしようと思う?(細野)
[佐藤] 最近の若い人が、みんな同じ顔に見えるっておっしゃってましたが、やっぱり(今の私たちも)同じ顔に見えますか?同じような洋服着て、同じような雰囲気だから・・・。
[細野] それもあるけどね、もっと良く観察してゆくと、人間の顔ってそんなに変化ないなぁ、と思って。どっかで見たことある人ばっかりだと思うの。
[桜井] 若い人に限らず?
[細野] 限らずね。特に若い人は。学生の人たちとかね・・・。分かるでしょ?着てるもの・・・特別変わった格好しようと思わないでしょ? みんな髪の毛切っちゃったり、テクノ・カットにしようと思わないでしょ? みんなと同じようにしたいと思う気持ち、あるんでしょ?
[桜井] 前、私はテクノ・カットだったんですけど。
[細野] ホントに? それだとやっぱり、後ろ指さされたりするわけでしょ。そうでもない?
[泉川] そういう髪型だと、目立つことありますね。キャンパス歩いてても、普通、我々だったら、スタジャンにGパンとか、そういう格好が一番多いですけど。
[細野] それが、標準服。
[泉川] いわゆる「昔の標準服」でしょうね。今は単に、学生服でキャンパスを歩いていると、かえって目立ちますから。(笑)
[木村] 言えますね。
細野晴臣の学生時代
[保志] 学生時代は、どういう学生だったんですか? 成績なんかは? どういう対策を練ったとか・・・。
[木村] どんなカンニングの仕方をしたとか。
[細野] カンニングはよくやったねぇ。(笑)僕が立教に在籍してた頃は、ちょうど大学紛争の時期でね。立教っていうのはちょっと波が遅かったんだよね。ちょうど、卒業試験の時に、そういう波が来ちゃって・・・。
[佐藤] 細野さんは、大学紛争はどう思いましたか?
[細野] 僕はね、音楽のことばっかり考えていたからね。ほとんどノンポリと呼ばれてた部類だから。
[桜井] 坂本龍一さんとは好対照だったのですね。
[細野] 全然違うのね。あいつは激しかったらしいから。
[桜井] その頃の大学生と、私たちと違いますか?
[細野] いや、変わんないと思うね。うん。
[佐藤] やっぱり、みんな、いわゆる「標準服」とか、だいたい学生の型がある。
[細野] それはそうだよね。いつの時代でもそうですよね。その時代の型があるし。その中にハマりたくないっていう気持ちと闘ったり、ハマっていたい、みんなと同じでなきゃ不安だっていう気持ちと、ね。でもちょっと違うのがイイと。(大学)紛争なんかも一つの自己主張の手段でしょ。エネルギーが無かったら、ああいうこと出来ないと思う。発散する目的があったし、紛争という型で表現する具体的な道があったと思う。今、紛争と言っても具体的じゃないでしょ。なんか出口が無いって言うか、どこに持ってって良いか分からないし、ひとまず平和だし・・・。だから僕も聞きたいんだけどね、みんな今の人たち、苦痛っていうものを持っているのかなぁと思って。
[木村] 苦痛は持ってるけど、みんな隠しているところが有るんじゃないですか。
卒論は『詩』
[木村] 試験なんかは、どうしました?
[細野] 試験は全然・・・。ほとんど無かったからなぁ。記憶ないんだよね。卒論も詩を書かせたり、テーマに関係なく作ってね、『これを提出するから、ぜひ、卒業させてくれ』って書いたりして。
[桜井] それで卒業出来たんですか?
[細野] 出来たんです。
[泉川] 安保闘争なんかには興味なかったのでしょうか?
[細野] 全然興味は無かったですね。愛校心もあんまり無かったし。立教は高校と大学が違うんだよね。何しろオシャレで、軟派が多くて、金を持ってるワケ。(笑)ダサイってことに、凄く敏感だし。僕は中学が区立の、かなり暴力教室みたいな所だったの。先生を職員室に閉じ込めたりして。バンカラが多くて・・・。
[木村] いじめられてたんですか?
[細野] いや、愛されてましたよ。(笑)子供っぽかったし、悪意が無かったから、不良とも仲が良かったし。結構モテたんだよ。小学生の時は、女の先生にも愛されたし。(笑)だけど、五年生の時、男の先生に代わって・・・。それから僕の人生は変わってきたみたい。(笑)憎まれたんだ。
[木村] いるんですよね〜。そういう理解の無い先生が。区立に行って・・・。トンガリ靴とか、ラッパズボンとか・・・。当時のオシャレで、高校へ行くとガラりと変わって、アイビーだもんな。
[桜井] その辺の精神的ショックは?
[細野] もちろん、あったよ。違和感だったな。初めてそういうのに気が付いて・・・。違う集団へ入って行く苦痛があったし。そこでオシャレにものすごく敏感になったんだ。それまでは全然無頓着だったんだ。
立教大学に入った理由
[木村] 立教に入られた理由は?
[細野] 当時、「ベン・ハー」の映画が好きでね。キリスト教に憧れてたんだ。
[大野] 学生時代の恋愛は?
[細野] プラトニックだったんだよ。小学校の時に好きだった子がみんなまとめて、女学館に入ったりしてたし。ただ、立教高校のヤツらは、みんなマセてて、プラトニックどころじゃなかったね。(笑)クラスに三人は落第生がいて、商人の息子が多いんだよ。そいつら、サイフを出すと札束が入ってるの。僕なんか音楽をやってたから、そういうヤツらも、音楽に興味を示すわけ。ロックとか、ベンチャーズとか。(笑)パーティに呼ばれたりする。自分で名刺なんか作って持ってんだよな。「悪魔クラブ」とか。(笑)そうやって気取って、大人の真似してんだよ。そこへ行くと、娼婦のような(笑いながら)女学生がね・・・高校だよ。居たりして。僕には娼婦のように見えたね?
早稲田に、美人はいるか!
[細野] 早稲田って、奇麗な人いますか?
[木村] 中にはいますよ。
[細野] ここには?
[木村] いやぁ、それは・・・。(笑)中には各学年に一人はいるんじゃないかという・・・。(笑)
[泉川] 学部によって違うんですよね。一人も女子がいないクラスがあれば、半分以上が女の子というクラスもあるし。教育学部なんか半分は女の子ですけど。
[細野] 男っぽい大学だからなぁ・・・。あっ、そうだ、僕は聞きたいことがあったんだ。何か新聞に出てたけど、統計とったでしょ。将来何になりたいか、という。早稲田の統計とったら、どこだって出てた?
[泉川] NHKじゃなかったですか?東京海上火災とか。
[桜井] 公務員に成りたいという人が増えてるんでしょ?現に、うちのサークルにもいるし。
[富田] あと、商社とかね。大企業に入っても、早稲田は兵隊ですから。重役は東大だし。割り切っちゃってるから。
[木村] どこの大学でも、似たようなデータが出るんじゃないかな。
[細野] ま、そうだろうけど、特に早稲田から、そういうのが出て来ると、大人はショックじゃないのかな?
[木村] 早稲田は魚屋や八百屋がイイとでも言ってんでしょうかねぇ。(笑)夢が無いんでしょうねぇ、公務員じゃ。
[細野] 早稲田には立派な図書館があるらしいですけど、みなさん、行くんですか?
[泉川] 今なんか満員ですね。試験時ですから。
[細野] みなさん、学部はまちまちなんだろうけど・・・。
[桜井] 女の子はほとんど、別の大学生なんですね。
[細野] ホント? どー言うことですか?
[木村] いやぁ、人気のあるサークルは・・・。(笑)
[細野] そういえば僕も、慶応の「風林火山」っていうサークルに参加してたし。(笑)
[泉川] 武田信玄の勉強でもするんですか?(笑)
[木村] 実は軟派な、テニスサークルでしょ?
[細野] そうです。かなり軟派なイベントグループです。今のマスコミに、そこから結構出ていってますし。「松本隆」も。
[全員] へぇ〜。
[木村] 今、僕たちと同じ歳だったら、何になりたいですか?
[細野] う〜ん・・・。多分、何にもなりたくないね。公務員にも。お嫁さんにでもなろうかな。(笑)
YMOが受けた<影響>について
[富田] YMOで音楽を作るのに、影響は有るのですか? 「ケイジ」がお好きだと聞いたんですけど。
[細野] 「刑事」?
[富田] 音楽家の「ジョン・ケージ」ですよ!
[細野] あ、ジョン・ケージか。(笑)
[富田] やっぱり、音楽を作るのに影響はあるんですか?
[細野] やっと八〇年代になってから、影響を受けるようになったみたいだね。その前までは全く、「音楽のための音楽」みたいな所にいたから・・・アカデミック過ぎるなあって思ってたんだけど、実際、つい最近だけど、また聞き直すと、アカデミックどころじゃ無くて、インスピレーションの塊のような思い付きって音楽だから、やってることが凄くテクノと似てるわけ。
今は、日本が全然面白い!
[富田] 市場として、日本人がアメリカの市場を狙う時、やっぱり限界っていうモノを感じますか? ヒットチャートで日本人が上位に食い込めるかという問題です。トップテンに入る時代がそろそろ来てもイイと思うんですけど。
[細野] もう、その時期を逸しちゃったみたいな気がするね。特にアメリカだけど・・・。アメリカの音楽状況って、いっさい影響力ないんだよ。今は。特に僕には。興味ないわけ。日本のヒットチャートの方が面白いと思うの。
[富田] 「オリコン」とか?
[細野] 全然面白い。曲を聞いてもそうだよ。『馬鹿言ってんじゃないよ〜』とか。(笑い)ああいう曲、アメリカには無いんだもん。アメリカの場合はもっと、フィーリングなのよね。ムードなんだよ。曲の作り方も計算されてるんだけど、緩いわけ。日本の歌謡界って狭いでしょ。包容力があまりないだけに、人に納得させるのが難しいわけだ。だから日本の歌謡曲は今、だんだん世界的にも影響しつつあるみたいだね。イギリスはもっと日本に近いわけだから、イギリスでヒットしてる曲って、歌謡曲のように僕には聞こえるわけ。ヒットチャートに関しては、そうなってこなけりゃおかしいと思うね。だから僕は、アメリカのヒットチャートを知らないし。今、何が一位ですか?
[富田] 「マン・イーター」でしょう。
[細野] 昔は「ビルボード」や、「FEN」のトップテン聞いてたり、直輸入してたけど・・・。それが刺激になって、今の音楽が出来てるんだけど・・・。僕がもし、今の子供だったら、ロンドンのヒットチャートで刺激を受けると思うね。
[木村] イギリスの方が面白いですか?
[細野] 面白いね。
[桜井] 日本って、まだまだアメリカのヒットチャートを重視する傾向がありますよね。
[細野] と?「オリコン」でしょ。(笑)歌謡界もイギリスっぽいモノをやりだしたしょ。「ジュリー」とか。YMOやる前はね、売れる物と自分でやってる物とは別のモノだと思ってたの。日本では売れないと思ってたワケ。その後、売れてから『これはどういうことなんだろう』って考えだしたワケ。最近では、自分でやりたいことをやって、それが極められた時には売れるんだ、ということが当たり前のような気持ちになって来たわけ。
[桜井] 本当にやりたいことをアルバムでやると、マニアックになり過ぎちゃって、かえって売れなくなるんじゃないかとか、その辺のギャップは無いですか。
[細野] 実を言うと、それはありますよ。だから計算が必要なワケ。周りの着せる物とか、音楽に対するアレンジの方法とかで変えて行くんだけど・・・。自分の作りたいものじゃないと、気持ちがこもらないでしょ。例えば、人から頼まれて、松田聖子の曲といって、向こうの欲するもの書いちゃうと、自分の気持ちが入らないわけ。そういう時はどうでもいい曲になっちゃう。人が納得しないし。「イモ欽」の時は、テクノの気持ちでやってたから、気持ちが入ったね。だから、霊的な念が入ると、曲が生きて来るワケだ。
[小瀬] YMOの音楽ですけども、最初から三枚目ぐらいまでは、一般受けするような感じなモノを作って、・・・。その後はやや、言葉が悪いけど、自己満足的なモノになっているように、僕はそう聞こえたんですけど、その点何か作る姿勢で変えたモノとかはあるんですか?
[細野] 全部、自己満足ですよ。セールスは意識しなかったし。三枚目までは日本で売ろうと思ってなかったし。好きなことをやっちゃおうと。いつもそうなんだけど。自分たちで楽しみながら作ったのであって、それが結果的に売れちゃったものだから、それで意識しちゃったみたいだね。
(この時、コーヒーとケーキが運ばれて来る。細野氏、隣りのケーキを見て)
[細野] おいしそうだなぁ、あれ。(笑)
[泉川] 交換しますか?
[細野] ずるいよ。みんなだけ、美味しいモノを取って。(笑)
幻の坂本龍一主演映画『なんとなく、クリスタル』
[桜井] 「クリスタル族」について。
[細野] まだ、言われてんの?
[桜井] 多少はあるみたいですね。坂本龍一さんが『なんとなく、クリスタル』の映画の主役に、ということもありましたけど、その時、坂本さんが怒っちゃって、三人で盛り上がったという話を聞いたんですけど・・・。
[細野] 真実を語ろうかな。(笑)教授が主役を頼まれたって言うんで、本を読んでみたんだよね。(高橋)幸宏と僕で・・・。笑っちゃったんだよ。面白くて。アホだなぁと思って。内容が。
[桜井] 『クリスタル』の本が?
[細野] うん。ただ趣向としては、これっきりだろうけど、面白いと思ったね。内容としては、書いてる人間の浅薄さがモロに出てるから、これの主役をやるというのは、教授も、よく見込まれたと思ってね。教授はやる気だったんだよ。
[桜井] え〜っ!
[細野] と言うか、迷ってたんだよ。主役だからね、一応。
[桜井] 田中康夫を呼んで殴ってやろう言っていたという。(笑)
[細野] (高橋)幸宏と僕がね、『これは酷い』って怒ってて、一緒になって・・・。開き直ったのね。僕の場合、映画に出るより、作りたいと思うね。
[小瀬] どういう感じの映画を作りたいですか?
[細野] 色々あるけど・・・。超娯楽作品を作りたいな。スピルバーグみたいに。
[小瀬] 「E・T」とか?(爆笑)
田中角栄について
[富田] 田中角栄をどう思います?
[細野] 角栄ねぇ・・・。この中に誰か、テロリストでもいないの?(笑)
[富田] ここにいますよ。
[泉川] 冗談じゃない!
[細野] あれは土建屋さんだから・・・。日本は土建屋さんがやってるような国だから。不動産屋だよ。ま、でも、エネルギーがあるところは感心しますけど。
[富田] 選挙なんかは?
[細野] 行かないんですよね。
[泉川] 支持する政党が無いからですか?
[細野] 無いですね。自民党にしろ、共産党にしろ。
[木村] 政界と芸能界と、どっちが汚いですか?
[細野] 政治家ねぇ・・・。良く知らないけど、あそこには居られないと思うよ。僕は。芸能界にも居られないけど。
[泉川] ちょうど、レコードか何かの、芸能界の団体をしていたのが、中曽根(康弘・元首相)さんらしいですけど。
[細野] 著作権業界かなぁ〜。
[泉川] 政治家から招待されるような事はありますか?
[全員] バカ! あるわけないだろう!
[細野] 環境庁かどこかので、あったなぁ・・・。何だっけなぁ?
個人的に聞いている音楽について
[大野] 今はどういう音楽を個人的に聞いているんですか?
[細野] この間、「昭和枯れすすき」のシングル盤を買ってきました。(笑)あとは、ベルギーの新しいレコードをね。
人を見ると殺したくなる!
[小瀬] 今、一番感心のある事って何ですか? 音楽以外で。
[細野] とりあえず、明日か明後日に降って来る人工衛星の事と、このあいだ「倉本聡」さんに会った時にまた刺激されたんだけど、クマザサの花が咲いていた時には危ないという話を聞かされてねぇ・・・。え〜と、人間が増えると、例えばクマザサでも、あれは増えると花を咲かせて一気に枯れちゃうワケ。
[泉川] 滅びの笛ですね。
[細野] そうですね。そういったことにちょっと興味があるんです。こういう(周りを見回して)狭い空間に人が一杯いると、何かこう、ヤバイ感じがするわけ。(笑)一人の空間を占める割合が今、侵されてると思うの。一時それで僕はノイローゼになっちゃったし。
[木村] 人が多くて?
[細野] うん。人を見ると殺したくなるの。(笑)
[木村] 危ないですねぇ。(笑)
[細野] だから、僕の顔を見て、犯罪者だって言う人がいるよ。(笑)でも、実際、みんな一人に帰ると、それぞれ、非社会的な人間だと思うんですよね。こう集まると、和を保とうとか、理論的に考えようとか、あるでしょ。一人になると、とんでもないことを考えていると思うんだよね。みんな。キチガイだと思うんだ。(笑)
[小瀬] 一人になると、どんな事を考えるんですか?
[細野] まず、自分のことを考えてます。あなたは?
[小瀬] そんなに変わらないと思うけど・・・。
[泉川] これからですよ。(笑)
[小瀬] これからは抑圧されて・・・。
[細野] 意識しだすと、自分の中の狂った部分というか・・・。誰でも持ってるんだから。それが出て来ると思うんだよ。それから何か変わるみたいだね、人間は。
[木村] そう意識しない人は駄目ですか?
[細野] 駄目じゃなくて、時間の問題ですよ。全く何も意識しないで、子供のままでいられるか? それが無理なら意識するしかないよ。一人一人、寝る前に夢を見るでしょ。あの世界と似ていると思うね。
酒について
[小瀬] お酒は強い方ですか?
[細野] 弱い方ですね。全然飲まないし。飲んだフリしてますよ。頭痛がしたり、呼吸困難になるし・・・。そういう人多いんだよ。多いけど誰も自分で言わないワケ。(高橋)幸宏は飲むね。酒無しではいられない性格だね。あのまま行くとアル中だ。(笑)
細野氏、早大生に音楽を問う!
[桜井] 今日は、いらっしゃって大学生に何か聞きたいことはありますか?
[細野] そうねぇ〜。あんまり無いなぁ。YMOには興味があるんですか? 無い人も、嫌いな人もいるでしょう。
[泉川] 「ライディーン」と「テクノポリス」は誰でも知ってるでしょう。
[宮下] 松田聖子の歌とか。
[泉川] アイドル歌手が、ニューミュージック系の歌手の歌を歌うというのが多いですけど・・・。ああいうのに抵抗がないですか? 逆に言えば、アイドル歌手は要するにニューミュージック系の歌手の歌を歌うから、まだ人気を持続出来るという感じがするんですが。
[細野] そうだよねぇ。突然始まったワケじゃないし。だんだんそういう方向に来たわけだから。ユーミンが出てきて以来。今はニューミュージックの言葉だけ残ってるようなモンだね。
[泉川] これを言ったら怒られるかもしれませんけど、中には自分で歌っても売れないから、アイドルに歌わせて一儲けしようと考えてる人もいるんじゃないですかね。
[細野] 誰に怒られんの?(笑)
[泉川] いやぁ〜。
[細野] そうだなぁ・・・。
[泉川] 本人が遊びで作ってるとか。
[細野] そうだね。それもある。ある意味では、「イモ欽」もお遊びだし。
<良い曲>の条件
[小瀬] 先ほど、『今までのレコードは全部自己満足だって』言われてましたが、今後もやっぱり、そういう方法をなされるんですか? 多くのアーチストというのは、世の中の流れに敏感で、そういうモノを取り入れてって、どんどん変わっていくという事がよくあるんですよ。
[細野] うん。
[小瀬] それで、一般受け付けするようにとか、セールスを意識したりとか。全くそういう物は今後も意識しないのですか?
[細野] いや、それはないと思うんだけど・・・。言い方の問題だと思うんだよ。自己満足って。(笑)
[小瀬] 自分が納得いくという?
[細野] そうでしょ。自分だけが満足する、ってまず最低条件じゃない、誰でも。まず、最低条件のの自己満足があって、その上に更に計算とか、知らないうちに身に付いている音楽の作り方とか・・・。自分だけで作ってるとは思わないからね。例えばレコード会社があって、歌手がいて、まぁ、YMOでもいいんだよ。曲を作る時に既に、みんなの意識ってものがあるわけだから。良い曲を書こうっていう意志、良い曲というのは、自分だけが良い、とは思わないワケね。だって自分が人の曲を聞いて、「良い曲だ」と思うような曲を、自分も書きたいと思うわけだから。
[小瀬] 「良い曲」っていうのは、色々意味があるでしょ。要するに、聞き手がそう思うとか。
[細野] うん。自分でも何回も聞きたくなるようなモノだね。言葉で言うのは難しいけどね。既に新鮮で、遊びの気持ちが十分入っていて、それで、関わった人たちの意図が反映されてて、自分もそれで十分ベストを尽くせるように、そういうのがトータル的な意味で「良い曲」っていうのかなぁ。
音楽の<聴かれ方>について
[桜井] 音楽って、色々な聴かれ方しますけど、そういうのは特に興味ありますか? こういう聴かれ方をしたいとか。
[細野] 全くないですね。だから、利用出来る音楽っていいなぁと思うワケ。ただし、「ミューザック」という分野があって、これはかなり意図的に作られた音楽でね、ピンからキリまであって、洗脳に使ったり・・・。色々な使われ方をしてるらしいんだ。
音楽と<思想>について
[泉川] 音楽に思想をおり込むようなことは?
[細野] どだい無理なことだと思うね。言葉でなきゃ(思想は)無理だよ。意志なら、おり込めるけど・・・。「思想」ってのは説明だと思うんだよ。
[泉川] でも、「軍艦マーチ」なんか、それなりの雰囲気を持ってますし・・・。
[細野] あれは「思想」を作ってるんだよ。「表現」じゃないね。だけど、言葉って難しいもんだね。「自己満足」とか、「思想」とか・・・。
今後のYMOの<ターゲット>について
[富田] これからのYMOの活動として、何か狙う所は? アングロサクソン族の鼻を明かしてやる、みたいな?(笑)
[細野] もう、十分鼻を明かしたつもりなんだけどね。順位はもう、興味がないってところで鼻を明かしているわけ。
[全員] なるほど〜!
悲惨な国、アメリカ
[細野] アメリカの人たちって、かわいそうなの。ホントに画一化されてて、良いものがどんどん埋もれちゃってて、手作りのモノが出てこないワケ。YMOのファンって、出てこれないんだよ。
[富田] レコード会社の方が、売れないと、出してやらないという?
[細野] そうそう。ますますそういうことになって来るわけ。売れないモノは、作らないっていう。日本にも言えるね。二〜三万枚売れる可能性のある音楽ってあるわけ。まぁ、僕がやってきたのは大体それに近いんですけど、今そのテの音楽が一番やりにくいんだ。何十万枚売れるか、後は自費制作レベルのモノしか、作りにくい状態なんだ。
細野晴臣、最終弁論!
[細野] かなり僕がリアルに考えているのはね、もう遅いなという、かなり悲観的な考えなんだけど・・・。
あのぉ・・・僕の子供の頃はね、新幹線も高速道路も無かったワケ。原っぱもまだ残ってて、土がいっぱいあったし。東京もローカル的だったよ。漫画を読むとね、東京の未来図が書いてあるの。高速道路とか。実際、SF的だったけどワクワクしていたの。今はもう、それを通り過ぎちゃったでしょ。新幹線はもう薄汚れて、高速道路も使い道にならない。そういう所に来ちゃったでしょ。あの頃ワクワクしてたモノは、一体何だったのかと思うわけ。街はコンクリートに埋め尽くされるのが嬉しかったし、家が壊されて、マンションが建ってゆくのもカッコよかった。(東京)オリンピックを境に発展していったでしょ。関東地方がコンクリートになっているでしょ。
今、痛切に感じるのは、木の家に住みたいと思うようになってきたの。こういう(喫茶店を見回し)障子があって、暖簾があって、春は全部開けっ放して、習字なんか書いたりして。(笑)そういうような生活を無くしちゃったと思った時、焦ったわけ。ついこの間なんだけど、初めて気が付いた時は、もう、遅かったワケ。とうてい、そういう家に住むのは、金があっても、無理だと思うの。ヒノキ作りの。
「西洋化、西洋化」って言うけど、これから本当の「西洋化」の道を辿ると思うの。コンクリートの家、外と中とが分離されてる家だと、人間も変わってくるでしょ。もっと極端に言うと、足元に土がない、それだけで人間の感受性が違ってくるワケ。それは、富士山麓の人たちが東京に来ると、三十分もいられない、って言うの。下がコンクリートで、足が痛くていられないってね。そういうのを聞くと、余計に感じるんです。かといって、コンクリートを壊すわけにいかないし。歩道も今は、コンクリートだしね。とすると、土を探すのが大変になって来るし、十年前に通った道を行くと、コンクリートの割れ目から草が出てるの。
今は、東京に住みたくない、と、東京を逃げ出した人がいるけど、今はもう、それをする他ないと思ってるの。それぐらい今、環境が大事な問題になってきてるし。揺り動かすことになるから、あまり言わないことにしてるけど、実際に恐いことだと思うんだ。日本人のエネルギーって、土と木の文化から貰って、一気に吹き出しちゃったんだよ。そのエネルギーが大事だったと思うんです。
まぁ、そんな感じで今日の講義は終わることにしましょうか。(笑)
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